「うちの父がテレビショッピングで同じ商品を何度も注文してしまう」「母が毎月何万円も通販で買い物をして困っている」など、高齢者の通販をやめさせたいと悩む家族の方は決して少なくありません。
特に高齢者の通販・テレビショッピングのトラブルは、認知機能の低下や孤独感などが複雑に絡み合い、単純な節約の話では解決しない深刻な問題となっています。認知症の方が同じものを買う行動や、高齢者が買い物に行きたがる・買い物依存症のような状態になってしまうケースも増加しており、月額数万円から数十万円の被害に発展することもあります。
しかし、適切な認知症の通販対策を講じることで、被害を最小限に抑えることは可能です。認知症の通販の受け取り拒否や返品・クーリングオフの手続き、認知症の通販被害について認知症の通販で消費者センターを活用する方法など、具体的な解決策が存在します。
この記事では、高齢者の通販における家族対応のポイントから効果的な高齢者の通販見守り体制の構築まで、実践的な対策方法を詳しく解説いたします。一人で悩まず、家族全体で取り組める解決策を見つけていきましょう。
高齢者の通販をやめさせたい理由とトラブル事例

多くの家族の方が直面している深刻な問題として、高齢の両親や義父母による過度な通信販売利用があります。あなたも「うちの母がテレビショッピングで毎日のように商品を注文して困っている」「父が同じ商品を何個も買ってきて、家の中が物であふれかえっている」といった悩みを抱えていませんか?
🚨 被害の目安:月額3万円以上の通販利用は要注意
一般的に、年金生活者の通販利用が月額3万円を超える場合は、家計を圧迫する可能性が高くなります。月額5万円を超える場合は、緊急の対策が必要です。
高齢者の通販問題は、単なる無駄遣いという範囲を超えて、家族全体に深刻な影響を与えてしまいます。認知機能の低下により判断力が衰えた高齢者は通販業者の巧妙な営業手法に引っかかりやすく、また、一人暮らしの高齢者の方は、孤独感を紛らわせるために買い物に依存してしまうケースも少なくありません。
これらの問題を放置すると、経済的な被害だけでなく、家族関係の悪化や高齢者自身の生活環境の悪化にもつながります。だからこそ、早期の対策と適切な対応が必要不可欠となります。
- 高齢者の通販・テレビショッピングでのトラブルの実態
- 認知症の人の通販被害とトラブル解消事例
- 認知症で同じものを買う行動パターン
- 高齢者が買い物に行きたがる理由・買い物依存症とは?
- 高齢者の通販には見守りが必要
高齢者の通販・テレビショッピングでのトラブルの実態

テレビショッピングによる高齢者のトラブルは、想像以上に深刻で複雑な問題です。
トラブルの実態について、具体的に見ていきましょう。
テレビショッピングでよく使われる誘導手法
- 「今だけ特別価格」「本日限り」などの時間的な限定感
- 「初回限定980円」「お試し価格」などの価格的な魅力
- 「先着100名様限り」などの数量的な希少性
- 「通常価格の50%オフ」などの割引感の演出
- 「健康になれる」「若返る」などの効果への期待感
このような謳い文句に誘導され購入してしまう高齢者の方が多くいます。
その中でも特に問題となるのは、定期購入のトラブルです。例えば、健康食品を「初回限定980円」と紹介し、実際には毎月自動で商品が届く定期購入契約になっているケースが非常に多いです。
電話注文時によくあるトラブル事例
- 「3か月続けないと効果が出ません」と複数月購入を勧誘される
- 「まとめて購入すればお得になります」とセット商品を勧められる
- 「今回だけの特別価格です」と別商品を追加で勧誘される
- 「お客様にぴったりの商品があります」と関連商品を勧められる
- 「サンプルをお送りします」と言って実際は有料商品を送付される
テレビショッピングで商品を見て電話注文する際に、上記のような追加勧誘を受けて商品を購入した場合、これは「電話勧誘販売」に該当し、8日間のクーリングオフが適用されます。単純なテレビショッピングは通信販売扱いでクーリングオフの対象外ですが、電話で追加勧誘があった場合は消費者保護の対象となります。
高齢者が理解していない契約内容の例
- 「定期購入」が毎月自動的に商品が届くことを意味すること
- 解約するには特定の期日までに連絡が必要なこと
- 初回価格と2回目以降の価格が大きく異なること
- 最低購入回数の縛りがあること
- 返品には条件があること
毎回同じ商品が届いて請求書が来ても、「頼んだ覚えがない」と困惑するものの、どう対処すればよいかわからずに代金を支払い続けてしまうのです。
認知症の人の通販被害とトラブル解消事例

認知症を患った高齢者の通販被害は、単なる買い物トラブルを超えた深刻な社会問題となっています。認知機能の低下により、正常な判断ができなくなった高齢者が悪質な業者のターゲットになりやすく、家族が気づいた時には既に多額の被害を受けているケースが増加しているのです。
被害金額の実例
- 軽度:月額5-10万円の不要な商品購入
- 中度:月額20-50万円の高額商品購入
- 重度:年間100万円以上の被害(複数業者から購入)
認知症による通販被害の主な特徴
- 記憶障害により同じ商品を何度も購入してしまう
- 判断力の低下で必要性を適切に判断できない
- 契約内容を理解できずに定期購入を継続してしまう
- 家族に相談せずに一人で問題を抱え込んでしまう
- 悪質業者の組織的な詐欺行為の標的になりやすい
判断力低下による購入パターンの例
- 料理をしない高齢者が調理器具を大量購入
- 同じ機能の商品を既に持っているのに類似商品を購入
- 年齢に合わない商品(若者向けファッションなど)を購入
- 使い方がわからない電化製品を次々と購入
- 体力的に使用困難な運動器具を購入
販売業者がよく使う手口
- 「以前にご注文いただいた商品の追加分です」という虚偽の説明
- 「お得なセット商品をご案内します」という関連商品の押し売り
- 「健康のために必要です」という不安を煽る勧誘
- 「今日中に決めないと」という時間的プレッシャー
- 「特別にお安くします」という特別感の演出
通販被害は高齢者の生活に多方面にわたって深刻な影響を与えます。まず経済的損失として、数十万円から数百万円規模の被害が発生し、限られた年金生活を圧迫して日常生活に支障をきたします。
また、家族が被害に気づいた際の衝撃や対応を巡る意見の相違により、家族間の摩擦やストレスが増大することも少なくありません。さらに、購入した商品が家の中に山積みになることで、転倒リスクが高まり衛生問題も発生します。最も深刻なのは、トラブルによるストレスや混乱が認知症の症状進行を加速させてしまう可能性があることです。
このような中、家族の協力でトラブル解消にいたった事例もあります。
成功事例
82歳の母親が月10万円もの健康食品を購入していることが判明。家族が業者に対して母親が認知症であることを伝えました。医師の診断書を提示して交渉した結果、契約を解除することができました。その後は地域包括支援センターと連携して見守り体制を構築することで、月1万円以下まで支出を抑制することに成功しました。
認知症で同じものを買う行動パターン

認知症の高齢者が同じものを繰り返し購入してしまうという問題もあります。家族にとって最も困惑する問題の一つです。
認知症の高齢者が同じものを繰り返し購入してしまう原因として、まず記憶障害により購入したこと自体を忘れてしまうことが挙げられます。また、見当識障害によって在庫量や適切な購入タイミングを判断できなくなることも大きな要因です。
さらに、「なくなったら困る」という過度な不安感や、買い物が日常のルーティンとして習慣化していること、そして日本人特有の清潔志向による紙製品への執着なども影響しています。
見当識障害により、現在どのくらいの在庫があるのか、次にいつ買い物に行けばよいのか、その商品をどのくらいの期間で消費するのかといった基本的な判断ができなくなります。また、家族の人数に対して適切な購入量がどのくらいなのかや、同じ商品を最近購入したかどうかも分からなくなってしまいます。
大量購入される商品として最も多いのは、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの衛生用品です。次に洗剤や石鹸といった清潔保持用品、日持ちする食品類、薬やサプリメントなどの健康維持用品、そして下着や靴下などの日用品です。
都市部、地方での対策の違い
- 都市部:大型量販店での大量購入が多いため、配送業者との連携が有効です
- 地方:商店主との個人的関係を活用するなど、地域全体での見守りが必要です
このような行動は、本人にとっては合理的な判断なのです。不安を解消するための自然な反応として同じものを購入し続けているため、家族が注意しても改善されにくいという特徴があります。
では、トラブル解消にいたった事例を見てみましょう。
成功事例
85歳の父親がトイレットペーパーを毎日購入。家族が近所のドラッグストアに事情を説明し、店員さんに「昨日も買われましたね」と声をかけてもらうように依頼。その結果、購入頻度が週1回程度に改善しました。
高齢者が買い物に行きたがる理由・買い物依存症とは?

高齢者の過度な買い物欲求は、単なる浪費ではなく、深層心理に根ざした複雑な問題です。
高齢者の買い物依存症の背景には、孤独感や寂しさを抱えており、人とのつながりを買い物で代替しようとする心理があります。また、自分でコントロールできることへの達成感を求める欲求や、「限定」「特別価格」といった言葉に反応してしまう特別感への憧れも影響しています。
さらに、若々しさを保ちたいという健康・美容への期待や、日々の退屈感を解消するための時間つぶしの手段として買い物を利用することもあります。
高齢者は買い物を通じて「お客様、いつもありがとうございます」という感謝の言葉や、「今日はお元気ですね」といった気遣いの会話を求めています。
商品について親切に説明してもらえる安心感や、名前を覚えてもらっている特別感、そして長時間話を聞いてもらえる満足感など、人とのつながりを感じられるコミュニケーションを重視しています。
買い物では数ある商品から自分で選ぶ楽しさという選択の満足感や、新しいものを手に入れる喜びという所有の満足感が得られます。また、商品が届くまでのワクワクした期待感、自分の判断で決められるというコントロール感、そして他の人より良いものを持っているという特別感など、多様な心理的満足を感じることができます。
代替活動の具体例
- 社会参加型:地域サロン、老人クラブ、ボランティア活動
- 創作活動型:手工芸、園芸、料理教室
- 学習型:生涯学習講座、読書会、パソコン教室
- 運動型:ラジオ体操、ウォーキングクラブ、水中ウォーキング
ただし、注意しなければならないのは、この買い物行動が高齢者にとって重要な生きがいになっている場合があることです。家族が頭ごなしに「無駄遣いをやめなさい」と叱ったところで、本人の心の空虚感は埋まりません。
このようなケースについて、トラブル解消にいたった事例を見てみましょう。
成功事例
78歳の母親が通販依存になっていたが、地域の料理教室に参加することで、買い物への執着が軽減。作った料理を近所の方におすそ分けすることで承認欲求も満たされ、通販利用が激減しました。
高齢者の通販には見守りが必要

高齢者の通販利用において、家族や周囲の見守りが必要不可欠です。
高齢者の通販利用において見守りが必要な理由として、まず悪質業者のターゲットになりやすいということが挙げられます。また、高齢者はトラブルを一人で抱え込む傾向があり、被害の実態を正確に把握することが困難になります。
さらに、購入した商品の蓄積により住環境が悪化し健康リスクが生じる可能性があるほか、買い物行動の変化から認知症の早期発見につながる重要な手がかりを得ることもできます。
悪質業者が高齢者をターゲットにするのは、判断力が低下しており騙しやすいからです。また、年金などの安定した収入があることや、断るのが苦手で優しい性格の人が多いことも理由となっています。
さらに、家族に相談せずに一人で決めてしまう傾向があり、同じ手口を繰り返し使えるという利点もあります。
高齢者がトラブルを家族に相談しない背景には、「自分が騙されたなんて恥ずかしくて言えない」という羞恥心があります。また、「子供たちに心配をかけたくない」という思いやりや、「家族に叱られるのが怖い」という不安も影響しています。
さらに、「自分で解決しなければ」という強い責任感や、「もう取り返しがつかない」という諦めの気持ちも、相談を躊躇させる要因となっています。
日常的な見守りにより、「最近、同じものをよく買うようになった」「以前は買わなかった商品を購入している」といった購買行動の変化を発見できます。また、「購入したことを覚えていない」「支払いについて混乱している」「契約内容を理解していない」などの症状も、見守りを通じて早期に把握することが可能です。
活用できる見守りサービス
- 民間サービス:セコム、アルソック、象印見守りホットライン
- 自治体サービス:配食サービス、緊急通報システム
- 宅配業者:ヤマト運輸「見守りサービス」、佐川急便「見守り配達サービス」
これらの変化は、認知機能の低下を示すサインかもしれません。早期発見により適切な医療につなげることで、症状の進行を遅らせることも可能になります。
高齢者の通販をやめさせたい時の対策法
📋 対策の優先度と実施時期
- ★★★ 緊急(今すぐ):受け取り拒否、業者への連絡、消費生活センターへの相談
- ★★☆ 重要(1週間以内):家族会議、役割分担、見守り体制構築
- ★☆☆ 長期(1か月以上):代替活動の提供、法的制度の検討
- 認知症の通販対策の基本的な考え方
- 認知症の人の通販利用 受け取り拒否の方法
- 認知症の人の通販利用 返品・クーリングオフの手続き
- 認知症の人の通販利用 消費者センターの活用法
- 高齢者の通販利用 家族対応のポイント
- 効果的な高齢者の通販見守り体制の構築
- 通販トラブル予防の長期的な取り組み
認知症の通販対策の基本的な考え方
認知症の高齢者の通販問題に対処する際には、根本的な考え方を理解することが重要です。
認知症の高齢者への対策では、完全禁止ではなく「安全な範囲でのコントロール」を目指すことが重要です。本人の尊厳を保ちながら被害を最小限に抑え、環境調整を中心とした対策を重視する必要があります。また、代替活動を提供して満足感を補い、家族の協力体制を整備することも欠かせません。
認知症の高齢者にとって、買い物は数少ない「自分でできること」「自分で決められること」です。頭ごなしに禁止するのではなく、本人の尊厳を保ちながら、被害を最小限に抑える方法を模索する必要があります。
効果的な対策として、購買刺激を減らす物理的な環境調整や、カタログ・DM・広告の事前排除による情報制限があります。さらに、電話制限やインターネット制限などの技術活用、他の活動による満足感の補完を目的とした代替提供、そして定期的な状況確認体制の構築による見守り強化などが有効です。
代替活動としては、家族との外出機会を増やすことや、地域サロンやデイサービスの利用が効果的です。また、趣味活動や手工芸への参加、ボランティア活動への参加、園芸や料理などの日常活動の充実なども、買い物に代わる満足感を提供できます。
本人への説明では、「あなたのためを思って」という上から目線の表現は反発を招くため避けるべきです。
代わりに「家計が厳しいので協力してほしい」という協力を求める姿勢や、「家族みんなで節約を心がけている」という共同参加の意識を示すことが効果的です。
さらに「安全のために一緒に見直しましょう」という協働の提案や、「健康のために生活を整えましょう」という本人のメリットを強調する方法も有効です。
認知症の人の通販利用 受け取り拒否の方法

★★★ 緊急度:高
認知症の高齢者が注文してしまった商品について、受け取り拒否を行うことは、被害拡大を防ぐ重要な手段の一つです。
受け取り拒否の基本的な流れ
- 商品到着時に宅配業者に「受け取り拒否します」と明確に伝える
- 商品を受け取らず、そのまま返送してもらう
- 代金引換の場合は代金を支払わない
- 同時に販売業者に連絡して契約解除を申し入れる
- 今後の配送停止を依頼する
受け取り拒否を行う前に、まず本当に本人が注文していない商品なのかを確認する必要があります。また、定期購入契約の有無や過去の購入履歴との照合も重要です。
さらに、家族の誰かが注文した可能性がないかどうかや、返送に伴う費用負担の有無についても事前に確認しておくべきです。
販売業者に連絡する際は、「本人は認知症で判断能力が不十分である」ことを明確に伝えることが重要です。医師の診断書があれば、その旨を説明することで交渉を有利に進められます。
また、契約時に十分な説明がなされていない可能性を指摘し、今後一切の商品送付を停止するよう依頼します。やり取りの記録を残すため、電話だけでなく書面でも同様の内容を送付することが効果的です。
都市部、地方での対策の違い
- 都市部:配送業者が多く、個別対応が困難な場合がある
- 地方:配送担当者との個人的関係を活用しやすい
近所の方に協力を依頼する際は、まず一人暮らしの高齢者の状況について説明し、理解を求めることから始めます。怪しい荷物が届いた場合の対応方法についても具体的にお伝えし、緊急時には速やかに連絡できるよう家族の連絡先を共有します。
また、日常的な本人への声かけをお願いし、異常な配送頻度に気づいた際には注意深く見守っていただくよう依頼することが重要です。
認知症の人の通販利用 返品・クーリングオフの手続き

★★★ 緊急度:高
既に受け取ってしまった商品について、返品やクーリングオフを行うことは、被害回復の重要な手段です。
返品やクーリングオフの適用条件は取引の種類により異なります。訪問販売や電話勧誘販売では8日以内のクーリングオフが可能で、通販の場合は各業者の返品規定に従う必要があり、通常7-14日以内の期間が設定されています。
特に、通販業者が返品規定を明示していない場合は、商品到着から8日以内であれば送料消費者負担で返品が可能です(2009年12月の改正で最終申込画面への返品特約表示が義務化)。
さらに、特定商取引法では判断能力不十分者への特別配慮があり、消費者契約法による不当な契約の取り消しや、成年後見制度による後見人の契約取り消し権も活用できます。
電話勧誘販売に該当するケースとして、テレビで見た商品注文時に別商品を勧誘されて購入した場合があります。また、「お得なセット商品があります」と追加勧誘されて購入した場合や、「定期購入の方がお安くなります」と契約変更を勧められて承諾した場合も該当します。
さらに、「今回だけの特別価格です」と限定商品を勧誘されて購入した場合や、「健康のために○○も一緒にいかがですか」と関連商品を勧誘されて購入した場合も電話勧誘販売として扱われます。
業者と交渉する際は、購入者が認知症により判断能力が不十分であることを明確に伝えることが重要です。医師の診断書や要介護認定書などの証明書類の存在を示し、本人が商品内容や契約条件を正しく理解していなかった可能性を指摘します。
特に定期購入契約であることを理解していなかった事実を強調し、家族として今後一切の取引停止を希望することを明確に伝える必要があります。
電話での交渉手順
- お客様相談窓口に電話をかける
- 購入者の状況(認知症であること)を説明
- 返品希望の理由を具体的に伝える
- 担当者の名前と対応内容を記録する
- 後日書面でも同様の内容を送付する
返品成功率を上げるコツ
- 医師の診断書や要介護認定書を準備する
- 契約書や領収書を整理しておく
- 冷静かつ毅然とした態度で交渉する
- 法的根拠を明確に示す
認知症の人の通販利用 消費者センターの活用法

★★★ 緊急度:高
消費生活センターでは、専門相談員による無料相談を受けることができ、法的観点から契約の有効性について検討してもらえます。また、業者との交渉方法について具体的なアドバイスを受けられるほか、必要に応じて直接的なあっせん(仲裁)も実施してもらえます。
さらに、同様のトラブル事例に関する情報提供や、他の関連機関との連携支援も行っています。
相談時には、購入した商品名・金額・購入日や販売業者名・連絡先を整理しておく必要があります。また、契約書・領収書・請求書などの書類一式を用意し、本人の認知症診断書や要介護認定書があれば持参します。
これまでの業者とのやり取りの記録も重要な資料となるため、電話や書面でのやり取りの内容をまとめておくことが効果的です。
消費生活センターは他の専門機関と連携してサポートを提供しており、地域包括支援センターとは高齢者見守り体制の強化について協力しています。
社会福祉協議会からは生活支援サービスの紹介を受けることができ、悪質業者への対処や詐欺被害については警察との連携も可能です。法的トラブルに発展した場合は弁護士会への相談を紹介してもらえ、認知症の診断や治療が必要な場合は医療機関への橋渡しも行っています。
📞 緊急時連絡先一覧
機関名 | 電話番号 | 備考 |
---|---|---|
消費者ホットライン | 188 | 年末年始を除き、原則毎日利用可能 |
国民生活センター平日バックアップ相談 | 03-3446-1623 | 平日対応 |
警察相談専用電話 | #9110 | 緊急時・詐欺被害相談 |
地域包括支援センター | 各自治体により異なる | 各自治体に設置 |
全国共通の消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すれば、最寄りの消費生活センターにつながります。
※ 年末年始(12月29日~1月3日)を除いて原則毎日利用可能。土日祝日は国民生活センターが補完対応(10:00-16:00)
高齢者の通販利用 家族対応のポイント

★★☆ 緊急度:中(1週間以内に実施)
高齢者の通販問題に家族として対応する際には、感情的にならず、戦略的かつ継続的なアプローチが必要です。
👥 家族の役割分担表(例)
役割 | 担当者 | 主な業務 |
---|---|---|
交渉担当 | 義理の関係者 | 業者との冷静な話し合い |
見守り担当 | 配偶者・同居家族 | 日常的な状況確認 |
連絡調整 | 実子 | 専門機関との連携 |
精神的支援 | 孫・親族 | 本人への声かけ・励まし |
記録担当 | 事務能力のある家族 | 書類整理・やり取り記録 |
家族として対応する際は、まず高齢者を責めたり否定したりせず、協力的な姿勢で接することが重要です。現状把握を正確に行い、購入ルートの特定と遮断を図る必要があります。また、家族間の役割分担を明確にし、本人に対して代替活動を提案することも大切な原則となります。
効果的な声かけとして、「心配しているから相談させて」という関心を示す言葉や、「一緒に整理してみませんか」という協力を求める表現が有効です。
また、「家族みんなで節約しています」と共同参加を促したり、「安全のために見直しましょう」と本人のメリットを強調することも効果的です。さらに、「お母さんの力を貸してください」と頼りにしている気持ちを表現することで、本人の協力を得やすくなります。
現状を正確に把握するため、どのような商品をどのくらいの頻度で購入しているかや、月額の購入金額がどの程度なのかを確認する必要があります。また、定期購入契約の有無や未払いの請求書の確認、商品の保管状況と使用状況についても詳しく調べることが重要です。
購入ルートを遮断するため、よく利用する通販会社への直接連絡やダイレクトメールの送付停止依頼を行います。
また、電話の発信制限設定やテレビチャンネルの制限、インターネット利用の制限なども効果的な方法として活用できます。
家族会議で決めるべき事項
- 緊急時の連絡体制
- 各自の役割分担
- 月額支出の上限設定
- 見守り頻度の決定
- 専門機関への相談タイミング
効果的な高齢者の通販見守り体制の構築

★★☆ 緊急度:中(1週間以内に開始)
高齢者の通販トラブルを未然に防ぐためには、日常的な見守り体制を構築することが不可欠です。
効果的な見守り体制を構築するためには、まず家族内での定期的な安否確認が基盤となります。さらに地域住民との協力ネットワークを築き、専門機関との連携体制を整備することが重要です。
また、配送業者や郵便局との協力関係を構築し、技術的な見守りツールを活用することで、より包括的な見守りが可能になります。
これらすべてを効果的に機能させるため、継続的な情報共有システムの構築が不可欠です。
📋 見守りチェックリスト(週1回目安)
- 届いた荷物・郵便物の確認
- 家の中の商品保管状況
- 同じ商品の重複購入チェック
- 使わない商品の蓄積状況
- 支払い状況・通帳記録の確認
- 本人の様子・言動の変化
家族による見守りでは、届いた荷物や郵便物の確認を定期的に行い、家の中の商品保管状況を観察することが重要です。
また、同じ商品の重複購入がないかや、使わない商品が蓄積していないかをチェックし、支払い状況や金銭管理に変化がないか注意深く見守る必要があります。さらに、本人の言動や行動パターンの変化に気づくことで、早期の問題発見につなげることができます。
地域との協力体制を構築するため、近隣住民への事情説明と協力依頼を行い、民生委員や児童委員との連携を図ることが効果的です。
また、町内会や自治会での情報共有を通じて地域全体での見守り意識を高め、地域ボランティアとの協力関係を築くことも重要です。さらに、商店街やスーパーとの連携により、日常的な買い物行動の変化を把握することも可能になります。
専門機関との連携として、地域包括支援センターでは総合的な高齢者支援を受けることができ、ケアマネジャーには介護サービスの調整を依頼できます。
社会福祉協議会からは地域福祉サービスの提供を受けられ、消費生活センターでは消費者トラブルの相談が可能です。また、詐欺被害や安全確保については警察との連携も重要な要素となります。
技術ツールの活用として、電話の通話記録確認システムやインターネット閲覧履歴のチェックにより、不審な連絡や購入行動を把握できます。
また、クレジットカード利用明細の監視や見守りカメラ・センサーの設置により、より詳細な状況把握が可能になります。さらに、GPS機能付き携帯電話の活用により、外出時の安全確保も図ることができます。
具体的な見守りサービス
- 象印「みまもりほっとライン」:電気ポット使用状況で安否確認
- 郵便局「みまもりサービス」:月1回の訪問・生活状況確認
- セコム「親の見守りプラン」:24時間対応の緊急通報システム
- ヤマト運輸「見守りサービス」:宅配時の安否確認
通販トラブル予防の長期的な取り組み

★☆☆ 緊急度:低(1か月以上かけて実施)
通販トラブルの予防は、一時的な対処療法では限界があります。長期的な視点での取り組みが必要不可欠です。
長期的な取り組みを成功させるためには、高齢者本人への継続的な教育・啓発と社会参加機会の拡充が重要な要素となります。
また、定期的な生活状況の評価と調整を行い、法的準備と制度活用についても検討する必要があります。さらに、社会制度やサービスの活用を通じて、地域全体での予防体制構築を目指すことが大切です。
効果的な教育・啓発として、具体的な手口の紹介と対処法の説明を行い、実際のトラブル事例を交えた学習会を開催することが有効です。
定期的な情報提供と注意喚起を継続し、家族や地域での勉強会開催を通じて理解を深めます。また、わかりやすい資料やパンフレットを活用することで、より効果的な啓発活動が可能になります。
社会参加を促進するため、地域サロン活動への参加促進やボランティア活動の紹介と支援を行います。
趣味サークルや同好会への参加を勧め、世代間交流プログラムの活用により多世代との接点を作ることも重要です。さらに、生涯学習講座の受講推奨や就労支援プログラムの活用により、高齢者の社会参加機会を拡充できます。
定期的な評価では、認知機能の変化状況と金銭管理能力の変化を注意深く観察し、社会参加の状況についても継続的に確認します。
また、健康状態や服薬状況の把握、住環境や安全性の確認も重要な評価項目です。さらに、家族関係やサポート体制の状況についても定期的に見直しを行う必要があります。
将来に備えて検討すべき法的制度として、将来の判断能力低下に備えた任意後見契約や、財産管理の効率的な仕組みである家族信託があります。
また、判断能力が不十分になった場合の法的保護を目的とした成年後見制度や、財産処分に関する意思表示としての遺言書作成も重要です。さらに、介護・医療・財産保護のリスク対策として各種保険の検討も必要になります。
活用できる社会制度として、デイサービスやヘルパー派遣などの介護保険サービスや、自治体・事業者による安否確認を行う高齢者見守りサービスがあります。
栄養管理と安否確認を両立できる配食サービスや、24時間対応の安全確保を提供する緊急通報システムも有効です。また、外出や社会参加を促進する移動支援サービスや、専門職による継続的な支援を受けられる相談支援サービスも活用できます。
よくある質問Q&A
認知症の診断がない場合でも対策できますか?
はい。認知症の診断がなくても、判断能力の低下が疑われる場合は消費生活センターや地域包括支援センターに相談できます。
本人が拒否する場合はどうすればいいですか?
無理強いせず、まずは信頼関係を築くことが重要です。地域包括支援センターの専門職に相談し、段階的なアプローチを検討しましょう。
被害金額が少額でも相談できますか?
金額に関係なく相談可能です。少額でも継続的な被害の場合、将来的に大きな問題となる可能性があります。
遠方に住んでいて直接見守りができません
地域の見守りサービスや配食サービスを活用し、定期的な電話連絡で状況確認しましょう。必要に応じて地域包括支援センターと連携します。
これらの長期的な取り組みを継続することで、高齢者が安心して生活できる環境を整備し、通販トラブルによる被害を最小限に抑えることが可能になります。
高齢者の通販をやめさせたい時の手順書|記事のポイント
- 月額3万円以上の通販利用は要注意、5万円超えは緊急対策が必要
- テレビショッピングでは「今だけ限定」「初回980円」など時間・価格・数量限定の誘導に注意
- 認知症高齢者は記憶障害で同じ商品を繰り返し購入し、判断力低下で契約内容を理解できない
- ティッシュや洗剤など日用品の大量購入は見当識障害による不安の表れ
- 買い物依存の背景には孤独感や承認欲求があり、代替活動の提供が効果的
- 悪質業者は高齢者の判断力低下と安定収入を狙って組織的にターゲットにする
- 完全禁止ではなく安全な範囲でのコントロールを目指し、本人の尊厳を保つことが重要
- 商品到着時の受け取り拒否は法的に認められた権利であり、代金引換時は特に有効
- 電話での追加勧誘があった場合は8日間のクーリングオフが適用される
- 認知症診断書があると業者との交渉で有利になり契約解除しやすくなる
- 消費者ホットライン188番で最寄りの消費生活センターにつながり無料相談が受けられる
- 家族の役割分担を明確にし、交渉・見守り・連絡調整・記録などを効率的に行う
- 地域住民や配送業者との協力関係を築き、複数の見守り手段を組み合わせる
- 地域サロンやボランティア活動など社会参加機会で承認欲求の解消へ
- 任意後見契約や成年後見制度など法的制度の活用で将来の判断能力低下に備える